第2章 アドルフ・ラインハルト
彼とはじめて出会ったのはU-NASAドイツ支部
両親が手術に失敗し2人とも同時に亡くした幼い私を引き取ったのがこの施設
当初は私も手術を受けることになったのだが
どうやら体に適合する生物遺伝子がまったくなかった為
そのまま施設で暮らすはめになったのだ
この施設には私のような子はたくさんいる
手術に成功した子もいれば
亡くなった子もいた
成功してもつらい訓練と実験の毎日で
日に日にボロボロになる子を
たくさん見てきた
私は手術も受けることなく
のうのうと暮らしているからか
度々怒りの矛先を向けられることがあった
殴られたり
蹴られたりしても
我慢
だってみんなが受ける痛みは
こんなものじゃないから
我慢するしかなかった
ある時、1人の男の子が
手術で得た能力を私に見せてくれた
なんの生物がベースなのだろうか
爪が異様に鋭く変化していた
「これで引っ掻かれたらどうなると思う?」
そんな問いに私は
「…それで引っ掻かれたら私も同じくらい
痛みを味わうことができる?」
私は卑屈になっていた
暗い研究所で自分だけ手術も受けられず
ただ見ているだけの自分が
とても卑怯な奴だと思えたから
きっと私のそんな態度がさらに火に油を注いだのだろう
鋭い爪が私に振り落とされる
その時だった