第3章 それは偽りの愛でした
私たちは待合室の椅子に腰をかけた
ローザさんはずっと泣いていたのか
泣き腫らした目をしていた
大丈夫ですか?
どうかしたんですか?
なんて、あざといだろうか。
でも、今はそういうしかない…
私にとっては”いい人”ではない。
でも、悪い人にも見えない…
私の気持ちが
吐き出てしまわないように
今はお客様として接しよう。
「…アドルフさんと
何かあったんですか?」
「あ…はい…ちょっと…」
ローザさんは俯いて口ごもってしまう
「ケンカですか?」
「そういうわけでは…ないんですけど…
ちょっと…色々あって…
私が全部悪いんです…」
「…それで、今日は謝りに…?」
「ええ…昨日、話しの途中で
アドくん仕事に戻ってしまって…」
アドくん…って呼んでるんだ…
「いてもたってもいられなくて…
仕事中ってわかってたけど…
どうしても…話したくて…」
「そうだったんですね…
なにやら…大変そうで…」
「…私が、悪いですから…」
「…何があったか…聞いたら
ご迷惑でしょうか…?」
心臓がうるさい。
ああ…私むいてないな…こういうの。
今にも心臓が張り裂けてしまいそう。
「あの…こんなこと…
恥ずかしい話なんですが…
私が…アドくんがいながら…
別の人と…」
ああ…
「アドくんには…
もう、離婚しようと…切り出されて…
でも、私…別れたくなくて…」
やっぱり…
聞かなきゃよかったかも…
「何度も…何度も…
謝ったけど…
もうしないからって…
謝ったけど…
もう、無理だよって言われて…」
「ローザさん」
「…え?」
「アドルフさんの気持ちは
考えた事、ありますか?」
「アド…くんの、気持ち…」
「ずっと、苦しかったんじゃ
ないですか?アドルフさんも…
ローザさんを…
愛していたから
ずっと…
知らないふりをして…
ローザさんとの関係が
壊れてしまうのを
恐れて…
アドルフさんも
つらかったんじゃ…ないですか?」
ローザさんは呆然と私を見つめる