第3章 それは偽りの愛でした
「気を悪くさせたらごめんなさい
あの、ローザさんのことなんですけど…
ローザさん、不倫…を…?」
「…それは、俺のせいでもある」
やっぱり!不倫してたんだ…
「俺が仕事で忙しく
なかなかあいつをかまってやれなかった。
あいつは…寂しかったと言っていた
…人間はなんて弱い生物なんだろうな…
あいつも、俺も…弱かったんだ」
「…許したんですね」
「許さざるを得なかった。
あいつを失うことが
俺はきっと…
1人になることが怖かったんだと思う」
アドルフさん…
「…そろそろけじめをつけないと
とは、思っていた」
「離婚、されるんですか…?」
アドルフは少しの沈黙の後
ふと私を抱きしめていた手をほどいて
椅子に力無く座り込んだ
また…悲しい顔してる…
今までずっと悩んでいたんだね
アドルフさん優しすぎるから…
ローザさんも、自分も
傷付くのがこわかったんだね…
「アドルフさん
私、本気であなたのこと好き…です」
驚いた顔で顔を上げる
アドルフさんを抱きしめた
「待ってちゃだめですか!?
アドルフさんが本当に離婚する気が
あるのなら…
私にも希望があると
思ってはだめですか?」
抱きしめる手を強めると
アドルフもそっと私を抱きしめてくれた
「…俺はもう、嘘はつきたくないんだ」
「…はい」
「嘘をつかずに生きたい…」
「…はい」
「お互いのこと
まだ、あまりよく知らないだろ?
…全部終わらせたら
…食事にでも行ってくれるか?」
「…っ!…もちろんです!」
嬉しい
嬉しい…
アドルフさんが
笑ってる。
初めてみた笑顔。
なんて優しく笑う人なんだろう。
「…とりあえず
離れる、か?」
そう、ずっと抱き合ったままだった
今更恥ずかしくなってきた
けど…
「もう少しだけ…」
そう言ったら
彼は少し照れたように笑った