第3章 それは偽りの愛でした
夢じゃないのは確かだ
けど、ここはどこ…?
さっきまでいつものロビーにいたはずなのに
ここは…
「アドルフさん…ここは…?」
「俺の部屋」
「へ…や?」
状況が読めない。
足が痛いと言った私を抱っこして
そのまま受付カウンターまで送って
くれるのなら理解できる。
…けどなぜアドルフさんの部屋に…?
「うちの部署
幹部は個人の部屋があるから…
足、見せてみな」
「え!?いや、でも…
とくに怪我してるとかじゃないので…その…」
「いいから、ほら」
私は椅子に座らされ
靴を脱がされた。
「…ああ、そうだ。
少し足触るけど
今流行りのセクハラですとかなんとかで
訴えるのは辞めてくれよ」
「そんなこと…しないですよ」
アドルフさんってこんなこと言うんだ…
って思うとおかしくて
少し笑ってしまった。
アドルフさんは何かそういう
医療系の資格もあるのかわからないが
私の足を触るか触らないかの微妙なタッチだ
触り終えると
骨や筋肉には異常はないようだな
といった。
「すごい。これだけでわかるんですか!?」
「まぁ…電気でな」
電気?
そういえばアドルフさんって
よく見たら
体…すごい傷だらけ…
筋肉もけっこうあって
鍛えられてて…
軍人さんみたい。
「…そういえば」
アドルフが話し出した
「さっき、ローザが来ていなかったか?」
心臓が一気に跳ねた。
そうだ…私が嘘をついちゃったから…
謝ろう。素直に…話そう…
「ちょうどローザの後ろ姿が見えたから
来ていたのかと思って
向かったらが座り込んでいるのを
見かけたからな」
「…アドルフさん」
「ん?」
「私…謝らないといけないことが…あって…」
私は嘘をついた自分に耐えられなくて
正直にアドルフさんに話した。
嫌われても仕方ない。
嫌われるも何も…まだ好かれてもいない
それなら、一緒だろう。
そう思って話した
ローザさんが来た用件
嘘をついてアドルフさんに繋げなかったこと
それらを話せば当然
”なぜ嘘を?”と聞かれるわけであって。
「…以前ローザさんがうちに来た時の
アドルフさんの表情が…
ずっと忘れられなくて…
なんであんなに悲しい顔を
しているんだろうって…思って」
ずっと困り顔で聞いていたアドルフさんが
ハッとした顔で
私を見つめ返す。