第3章 それは偽りの愛でした
「ローザさん!
すみません…内線にも出ないみたいで…
忙しいんですかね…」
「あ、そうですか…
ちょっと伝言があっただけなので…
大丈夫です!」
「…よければ伝言だけでも伺いましょうか?」
「…いいですか?頼んでしまっても…
くだらないことなので恥ずかしいですけど」
「はい!大丈夫ですよ!」
「私のお父さんが体調を崩してるらしくて
3日間ほど実家に帰るねって
伝えようと思ったんですけど…
あの人なかなか電話に出なくて」
「あ、そうなんですか…
よければお伝えしておきますよ」
「ありがとうございます!
助かりますー!」
「…お父様…大丈夫なんですか?」
「あ、大丈夫だと思いますよ!
お父さん1人で暮らしてるので
…ちょっと心配で…」
「そうですか…それは心配ですね…
それではしっかりとアドルフさんに
伝えておきますので」
「…はい!よろしくお願いします!
では…」
ローザを出口まで送り届けたあと
私は力が抜けたように
その場に崩れ落ちてしまった
だめだ…私…こんな嘘までついて…
最低だ…
こんな汚い人間
アドルフさんに好きになってもらえるわけがない!
もう、嘘は、やめよう…
あとで自分が苦しくなるだけだ…
ゆっくり立ち上がると
後ろに人の気配を感じで振り返る
「っ…アドルフさん…」
そこにはアドルフの姿
「…今、声をかけようと思っていたんだが
…こんなとこで座り込んでどうした?」
だめ。
今、1番会いたくないタイミングで
会うなんて…。
こんな汚い私を見ないで…
「…ちょっと足が痛くて
もう大丈夫です」
「おぶってやろうか」
「おぶっ…!?
いえ!大丈夫ですから!」
「痛くて座り込むなんて
相当な痛さだろ
…ほら」
ほらって!
待って待って無理無理無理無理!
「本当に大丈夫ですから〜!
重いからアドルフさんが足痛める可能性が…っ」
なかなか従わない私を
アドルフさんは軽々と
お姫様抱っこで持ち上げた
「〜〜〜〜〜っ!!!」
なんで?なんで!?
助けて!この状況についていけない!
アドルフさんにお姫様抱っこされて…
いやいや!嘘!夢だ!
そんだこれは夢だ!
目を覚まそう…
私は顔を上げゆっくりと目を開ける
するとそこには
アドルフさんの横顔
…夢じゃない…