第3章 それは偽りの愛でした
「不倫!?…あんなに幸せそうなのに!」
いきなりの昼ドラ展開に思わず私も食いつく
「ここだけの話…うちの営業部の奴と一緒にいるところを
見たって人がいるのよ」
「たまたまなんじゃあ?」
「ん〜どこで接点を持ったのかがわからないのよね〜。アドルフさんは宇宙開発部だし、どうやったら営業部なんかと…
ていうか、ただの営業部の末端なんかより
断然アドルフさんの方が条件いいだろうに!
イケメンだし年収もいいだろうし…
あー羨ましいっ
なんで私は結婚できないのよ」
まぁまぁ…と、荒ぶる先輩をなだめていると
話が終わったのかローザさんがやってきた
「無事に会えました。
ありがとうございました。では…」
そうにっこり笑って去っていくローザさんを
見送る私たち
いい人そうだけどなぁ。
あんな人が不倫なんて、何かの間違いだよ
だってあんなに幸せそうな夫婦じゃ…
…
…え?
なんで、そんなに悲しそうな顔しているの?
なんでそんな目で奥さんを見送っているの?
アドルフは先ほどとはうってかわって
悲しく、寂しい目をしながら
奥さんの後ろ姿を
見えなくなるまで見つめていた
思わず
声をかけてしまった
「アドルフさん!」
アドルフはハッとした顔で
こちらを見た
「…なんだ?」
あ、私のこと覚えてる…かな?
「あ…大丈夫かな…って思って!
何かぼーっとしてらっしゃったのでつい…」
アドルフはいつもの顔に戻っていた
「…ああ、心配ない」
「そうですか。ならよかったです
…奥さん、綺麗な方ですね」
「そうだな…俺も思うよ」
…アドルフさん本当に奥さんが好きなんだ。
少しだけ心が痛んだ
本当に少しだけね。
「じゃ、俺は行くから」
「…はい!お疲れ様です」
何もない…わけじゃなさそうだな
奥さん、本当に不倫を…?
いやいや私には関係ないことだ
首を突っ込むのはよそう
「ちょっと
いきなり話しかけるなんて…意外とやるね」
「いやぁ…気になって…すみません」
「びっくりした〜
私あの人はちょっと怖くて話しかけられないのに…」
ははは…自分でも今の行動にはびっくり…
「あ、今ちょうど暇だし私休憩行ってきちゃうね〜」
「あ、はーい!いってらっしゃい」