第3章 それは偽りの愛でした
それからしばらくは仕事に追われ…
忙しい日々が続いた。
それはある日のこと。
受付に1人の女性が訪ねてきた。
「すみません〜あの〜
呼んでほしい人がいるんですけど…」
「はい、かしこまりました
どなたをお呼びいたしましょう?」
「アドルフ ラインハルトを」
アドルフ ラインハルト…?
あれ?聞き覚えがあるような…
「かしこまりました。
失礼ですが、お客様のお名前は…」
「アドルフラインハルトの家内です
ローザといいます」
「ありがとうございます
只今呼び出し致しますので
そちらの待合室でお待ちください」
えーと…アドルフ…アドルフ…
名前から検索して
内線で電話をかけた
「あ、こちら受付です
アドルフさんの奥様がいま受付に
いらっしゃってますが…
はい…はい、わかりました。
お伝えしておきます」
私は電話をきるとローザさんに話しかけた
「アドルフさんすぐにいらっしゃるようです」
そう言うと彼女はにこっと笑い
「ありがとうございます!
電話、全然繋がらなくて…」
と、申し訳なさそうに謝った
「いえいえお気になさらず」
ペコっと頭を下げ
私はその場を離れる
アドルフさん…って確か…
そうだ!あの初勤務の時に会った…
そうかあの人、結婚してるんだ〜
けっこう若そうに見えたけど
ちょうどお昼時間で来客も少なかった為
チラチラと様子を見ていたら
アドルフさんが来た
ああ、あの時も確か襟で顔を半分隠していたっけ。
けっこうイケメンそうなのに
もったいない。
奥さんがぎゅっと抱き着いて
アドルフさんが少し緩んだ顔で
頭を撫でる
えー…なにあれ
見てるこっちが妬けちゃうわ。
でもアドルフさんって冷たい印象というか
クールな人なのかなって思ってたら
あんな顔もするんだ。
へぇ…ちょっと、かっこいいかも…
「、見すぎ」
先輩に頭を小突かれた
「あーごめんなさい!
いや、なんか羨ましいなーって」
「アドルフさんね
あの人はああ見えて愛妻家なのよ
けっこう有名よ?
イケメンで愛妻家って」
「へぇー!そうなんですか…
綺麗な奥さんですもんね」
「でもね、ここだけの話…
あの奥さんもけっこうやるみたいよ?」
「え?」
「不倫、してるって噂よ」