第2章 アドルフ・ラインハルト
自宅に着き
アドルフは我が子をベッドに寝かせると
おでこにそっとキスをした
そしてうなだれたまま
一人ずっと悩んでいるを
強く抱きしめる
「アドルフくん…」
の頭を優しくなでると
俺にしがみつく力が少し強まった
「…お前は、何も心配するな」
「…え?」
「どうせまた難しいこと
一人で考えてたんだろ?」
「…あのね、アドルフくん…
さっきね、」
「わかってる」
「え?」
「聞いたんだろ?自分のこと」
「…聞いた…けど…
あれは、本当なの?」
アドルフは小さく頷く
「どうしてアドルフくんは…
いつから知ってたの?」
「数年前に偶然、資料を見つけて
それで知った
話すべきか迷ったが…」
はそっか…と少し微笑む
「…おかしいよね私
まだちゃんと頭の中整理できてないんだけどね
でも…救われた気がした」
「救われた?」
「どうして自分はこんなに
役立たずなんだろう
自分だけ楽に生きて…
パパもママも、死んじゃったのに
私だけ助かってさ
…って思いがずっとあったの」
「けどね、それを聞いた瞬間
やっとみんなと同等になれたって
思っちゃったの
…これで本当に
口だけじゃなくて
アドルフくんの痛みも
分かってあげられるって
思っちゃったの
結局、記憶はないから
変わらないのかもしれないけど…
私の中で救われた部分もあるの」
「そうか…
だけど、この先待っている運命は…」
「うん…火星…だよね」
「お前はもう一人じゃないんだ
まで火星に行ったら
誰があの子を守る?
…俺がなんとしても
お前だけは火星には行かせない
お前を…軍の思うようにはやらせない」
「……アドルフくん
泣いてるの…?」
初めて見る
彼の涙
彼はパッと顔を背けた
「…やっと幸せになれたんだ俺…
お前は俺を…人間にしてくれた
愛なんて
もう二度と
誰からももらうことないと思っていたから」
「うん…アドルフくん…」
「もう…俺の幸せを
軍の奴らに奪いさせはしない」
アドルフくんの涙と想い
私はそれを聞いて
決心したんだ