第57章 忘却の輪舞
「信玄はおじさんか。俺はお兄さんだったぞ」
やけに嬉しそうな謙信の声
笑いを堪えつつ幸村は
「俺お兄ちゃんだったわ」
二人が信玄にそう告げる。
「せめて俺も、お兄さんにして貰えないかな?」
ひきつりながらも、優しくリオに告げ、その場に居た佐助に目で合図し、ゆっくりと外に出てゆく信玄と佐助。
部屋から少し離れ、壁に凭れ、腕組みをしながら、佐助に目を向ければ
佐助が申し訳無さそうにしつつ
「僕がちょっと目を離した隙だったんです。リオさんが木から降りられなくなっている子猫を助けようとして.....元々彼女はアグレッシブな所があるから.....」
「あぐれしっぷ?何だそれは。それで?俺のあのおじさん発言と、どうゆう関係があるのかな?」
ため息まじりに信玄が続きを求める。
「どうやら、木から落ちたらしく、その時に頭を打ったみたいで、今、リオさんは自分の年齢の自覚が六歳なんですよ」
「六歳......記憶に障害を起こしてるのか。成る程。にしても、俺はおじさんで、謙信がお兄さんなのは、気に入らんな」