第57章 忘却の輪舞
「リオが怪我をした?」
幸村が信玄の所に慌ててやって来たと思ったら、幸村の口から聞かされたのはそんな話。
「命に別状は無いそうなんだけど....」
歯切れ悪く言い淀む幸村の言葉
会ってみれば分かるからと、そう告げた幸村と信玄は二人連れだって彼女の部屋へと向かった。
静かに襖を開け、部屋の中の様子を伺えば、褥に座っている彼女の姿が見受けられた。
その側には、謙信と佐助も鎮座して居る。
彼女の頭部に巻かれている包帯が痛々しい。
ひとまず今のところ、大事には至って居ないようなその場の雰囲気に、二人は部屋に入り彼女の側に座った。
「姫、何があったんだい?」
信玄が優しく問いかけると、
視線を彼に向け見やった後
小さく小首を傾げて
「姫?んーと、おじさん誰?」
きょとんとした表情で
信玄の事を見ているリオ。
「おじ.....さん?」
一瞬事態が飲み込めず、
固まってしまう信玄
隣に居た幸村が、そのリオの発言で、ぶっと盛大に吹き出した。