第32章 Timid heart~秀吉~
想いが溢れ出る様に
秀吉さんの頬に指を這わせてた
見つめれば瞳の中に燻ってる
情念が揺れてる
それなのに、ふいっと視線を反らし
「少し酔ったみたいだな、風でも当たりに行くか」
そう言うと背を向け
立ち上がる秀吉さん
きゅうっと心臓が悲鳴をあげたが
大人しく彼について
部屋を出た
促されるまま、とぼとぼと
後をついて歩く
宿から程なく離れた場所
竹林を抜ければ東屋と
滝が目の前に現れた
月明かりに照らされた
飛沫を上げる滝
そこだけ空気が少し冷たく感じる
幻想的な情景である筈なのに
沈んだ心がそう思わせるのか
何だかとても不気味に思え
ぶるっと体が震えた