第5章 夏
だいたい俺とヴィクトルと勇利が一緒に出歩いてて、なにかハプニングが起きないわけないんだよね。顔面偏差値ヤバイし。勇利は僕だけ普通……とか思ってるかもしれないけど勇利だって綺麗な顔してるんだぞ!!
もうそろそろ明日の練習にも響くし帰ろうか、なんて言った後、それまで我慢していたのか若い女の子たちが一斉に取り囲んできた。この後ぉ、一緒にお茶しませんかぁ。あああ〜〜女の子柔らかい!でも触れられたところからなにかが減ってる気がする。圧がすごい。
ヴィクトルは女の子に慣れてるからニコニコしてるけど日本語がわからないから役に立たないし、勇利なんかもうアタフタしている。この状況から抜け出すには自分が頑張るしかなかった。
「ごめんねー、俺たちもう帰るから」
「ちょっとだけでいいんでぇ」
「この2人忙しいからさー」
「えーじゃあお兄さんだけでも!」
あれ?しくじったな?
「えっちょっと」
「お兄さんいくつですかぁ?」
「あっもしかしてあの喫茶店のマスターさん?」
あってる!身バレしてる!!田舎せまいぞ!!!世間が狭い!女の子の集団に特に俺がグイグイされるハメになってしまった。いや嬉しいけど、2人を家に返さなきゃいけないし、あんまりそういうのいいっていうか。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃない、ヴィクトルたすけて」
「日本語喋れないしなあ」
クソッ!この色男!あしらい方なんてごまんと知ってるだろうに言語の壁が厚くて困る。もだもだしている間にも心なしかちょっとずつ女の子たちが増えていた。というか、野次馬なのか男も普通に混じっている。そりゃそうだよね、なんか人が集まってたら気になるよね。一般人ですから気にしないでください。
そういえば勇利は大丈夫か?とっさに後ろに匿ったけど……。
振り向くと同時に勇利の声がした。
「ごめんなさい、飼い犬が家で待ってるからもう行くね。ほら2人とも行くよ」
勇利に腕を掴まれる。ヴィクトルも勇利に引っ張られて、女の子たちの残念そうな声を背中で聞きながら3人とも人の山を脱出した。
「ねえ勇利なんて言ったの?」
「マッカチンが家で待ってるから……って……。勇利めちゃくちゃカッコいい……情けなくなってきた……」
「はいキビキビ歩いて」
僕だってやれるんだから、なんて鼻を鳴らした勇利に負けた夜でした……。