第6章 初秋
そんなこんなで中四国九州選手権大会当日。俺は無事ヴィクトルコーチ様様のメンタルコントロールのおかげであんまりそわそわしすぎずこの日を迎えることができた。
なんと今日出場する南くんにも頑張ってね、なんてメールで送る余裕まであった……。もちろん直前じゃないけどね。1週間くらい前。
勇利のファンってことで交流があって、そこそこ仲がいいのだ。
それと、エロスの衣装を着て準備万端な勇利の写真をこっそり撮って、ユリオにメールで送った。すぐに下品なハンドサインの絵文字だけが返ってきた。
「ねえユラ」
「なに勇利クン」
「僕去年全ミスだったわけだけど」
「なに既知の問題を今更」
しかし俺と違ってそわそわがとまらない勇利は、いかにも沈んでますって声で話しかけてきた。そわってるな〜〜〜。今シーズンの勇利をずっと見てきて、絶対に大丈夫ってわかってるのでちょっと面白いぐらいである。
「勇利には神様がついてんだから、大丈夫」
「その神様いないけど」
落ち着かせるためにヴィクトルを引き合いに出そうとしたら何故かヴィクトルは勇利の側から姿を消していた。Why? コーチ失踪か?
「あ、いるよ勇利……なんか……着替えてるけど……」
「はぁ!?」
ヴィクトルコーチ、SP直前に何故か衣替えをして御登場である。スーツだ。めっちゃ似合ってる……イケメンがいる……。
「なんで着替えてるの!?」
「今日は俺の華々しいコーチお披露目試合だぞ。正装で然るべきだ。どう?ユラ」
「似合ってるけども」
なんというか、気がすごい削がれた。そうだけどそうじゃない感がすごいぞヴィクトル。勇利が顔を手で覆ってるのを見てほしいぞ。