第5章 夏
今年も祗園祭の季節がやってきた。今年は勇利を誘っていいかな?なんせ5年ぶりである、久しぶりに練習の後でもいいからちょっとぐらい遊びたい。でもヴィクトルもいるしなあ……。もしかしたら2人で行く約束とかしてるかもしれない。してそう。最近あの2人は拍車をかけて仲がいいからなんだかつらい。いたたまれない。
はあ、とため息をつくと目の前にいた勇利がどうしたの?なんて首を傾げていた。ただいま勝生勇利1名様ご来店中である。
「おい、いっちょかれとらん?」
「え?」
「なんでもない」
なんだか勇利と目を合わせづらくなってきた。勇利が勘違いしやすいのは知ってるけど俺だって言葉にしづらい時ぐらいあるよ!!もーこれどうすんの!!
どうすればいいかわからなくなってひたすら視線から逃げていると、急に勇利がめちゃくちゃ低い声を出した。
「なに悩んでるか知らないけど、ユラって本当に僕にはなにも言ってくれないよね」
「え、なに怖い」
「優ちゃんとか真利姉ちゃんには色々相談してるの知ってるよ。僕のこととか、お店のこととか。でも僕なにも聞いてない」
「待って、勇利のことを勇利に相談できないでしょ」
「してよ!!!!」
「ええ……」
いきなり怒り始めた勇利に困惑する。……いや、最近『急に怒る』なんて表現は間違いで、日々の鬱憤とかが少しずつ溜まって、噴出したのがその『急に怒る』タイミングなんだ、って話があったな。もしかして勇利ってば、普段から俺が勇利に相談しないの気にしてたのか?
「……だって勇利はスケートのことでたくさん悩んでるだろうし、俺のなんかの悩みは聞かせられないだろ」
「ユラが自分なんかって言うの初めて聞いた」
「今なんで話そらした?」
勇利と顔を見合わせる。さっきまで怒ってたのにきょとりとした顔の勇利がなんかおかしくて吹き出してしまった。勇利も一拍おいて笑いだす。
「自分に自信のないユラってなんか気持ち悪いよ」
「自信とかの問題かなあ……まあ、わかった、迷惑かけることにするよ」
うん、そうしてね。すっごく柔らかく笑う勇利に、変わったなあと内心びっくりした。ヴィクトルコーチすごい。
「さっそくだけど、祗園祭一緒に行こうよ」
「行きたい!…え、そんなことで悩んでたの?」
ちょっと違うけど、でも一緒に行ければ解決することなんです。