第4章 初夏
なんだかまた勇利は行き詰まっているみたいだった。ヴィクトルと喧嘩までしたらしい。っていうか一方的にヴィクトルを勇利が避けてる?
もう夜の22時なのに、勇利は俺の店まで走ってきた。音楽聴きながらゆっくりする俺の癒しの時間が……。と思ったけど、頼られるのは嫌いではないので一つため息をついただけにした。謝ってるけど本心では別に悪いと思っていなさそうな勇利の態度も嫌いじゃない。
「俺のところきたってヴィクトルにすぐ見つかるだろ」
「じゃあ家!ヴィクトル知らないよね?」
「必死か」
俺の居住地は、自分の店のすぐ裏にある小さいアパートの2階だ。1DKのそれなりに狭くも広くもない、いかにも一人暮らしの人間が住んでるような部屋に、やっぱり一人で住んでいる。ペットも不可だし面倒も見れないので飼っていない。勇利を部屋に上げると、勇利は自分の状況も忘れてはしゃいでいた。
「なんかお洒落度増してる!!」
「そりゃ5年も経ったら変わるし、5年前は段ボールだらけだっただろ」
ちょうど勇利が留学に行くという頃に、いろんなツテを使って融資を受け、俺は自分の店を作り上げた。元々は雑貨屋だった貸し店舗を軽食も取れる喫茶店にリフォームし、定期的に食料やコーヒー豆を仕入れるアテを見つけ、周りの人に手伝ってもらいながらもなんとか形にした俺のお店。ちょうどそれと同時期に、このアパートを契約した。実家から自分で荷物を運んで、段ボールを机に勇利とパーティをしたのはいい思い出だ。引っ越し祝いと勇利の壮行会を兼ねていた。
「もうあれから5年かあ」
「酒のも、勇利の成人祝い日本でしてないよ俺」
日本酒を取り出してグラスをチラつかせながら言うと、勇利が好戦的に笑った。
「飲み比べすると?おい負けんとよ」
「明日も練習あるの忘れてない?」
「あっ」
テンション高すぎだろ、子供か。飲みサーとかに入ってる大学生みたいな思考をしている勇利が面白すぎる。しばらく笑っていたら拗ねられてしまった。
「アスリートなんだから、体大事にして。あと俺お酒そんな強くないから」
「え、そうなの?」
そうなの。普通に飲むぞーとグラスを手渡す。なんだか勇利はもう酔っ払ったかのように嬉しそうにしていた。