第3章 春
何故かヴィクトルにつれられ、リンクサイドで2人の滑走を見ることになった。俺ここでいいの?関係者みたいな扱いされて内心有頂天である。チケットはこっそり買って確保していたので無駄になってしまったが、リンクサイドで見れるならせっかくだしお言葉に甘えておこう。
演技前で集中している2人に話しかけるのもなーと思って諸岡アナのインタビューの間も、その後も、控え室の端っこで無言で突っ立っていたら、ユリオが近寄ってきた。
「なんか言えよ」
「えーーっ、集中乱したら悪いと思って」
「いいから」
ユリオ、緊張してるのか?なんだかいつもと違うような。ソワソワしてる。えー、じゃあ、と口を開こうとしたところで優子が入り口から顔をだした。
「ユリオくん、そろそろ出番だよ」
ユリオが頷いて、ジャージを脱ぐ。そういえば衣装まだ見てなかった。勇利のは着る時に髪の毛のセットを手伝ったので見た。ちょっとユリオ顔赤くね?
「っはわーーー!!!!これはヴィクトルジュニア時代伝説の!スケクロス!!!!」
え、なに有名なの!?ヴィクオタではないので見覚えがあるなーぐらいしかわからない。伝説なのか。そうか。
そして、なんかいろいろ出てるよ優子。主に鼻から。っていうかユリオも優子見る視線が……恋か?知らない間になにかあったのかな……。
「すっごい似合ってるよユリオくん!」
「白似合うなーユリオ」
「頑張って!!」
「お、おう」
優子の声援にユリオがめっちゃ照れている。滅多に見ない感じの笑顔なのでちょっと微笑ましくなってしまった。
「ユラはなんかねーのかよ」
「ンン、ユリオのアガペー楽しみにしてるよ。Давай!」
ダバイ!いっちょかましたれ!ぐらいの勢いを込めて言うとユリオはまた見ない感じの笑顔を浮かべた。アガペーって感じではないけど年相応の笑みでこれまた微笑ましい。なんだか弟ができたような気持ちになってしまった。
優子に背中を押されリンクへと向かうユリオに続いて、ヴィクトルも勇利もリンクサイドへと向かう。
「ねえ、ユラ、」
こちらを振り返らずに勇利は俺の名前を呼んだ。
「僕のエロスちゃんと見ててね」
日本語で呟いた勇利の表情は見えなかったけど、勇利の背中に当たり前だろと返してやった。