【ONE PIECE】 淡く、儚い、モノガタリ 【ロー】
第2章 別離。
*
「うわあ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ああ゛…、っ!!!」
「───────シェリルっ、!!?」
歪んだ視界の中。
涙を流しながら、喚きながら。
今、見えているモノが、現実なのか、夢なのか。
わからなくて、怖くて、泣き叫んだ。
真っ赤なままの背景が怖くて、何度も瞬きをするけれど、消えない、「赤色」。
「シェリル…ッ、シェリルっ!!」
「う゛ぅ゛ううぅ゛うう゛───────っ、!!」
「しっかりしろっ、シェリル・ウェルストッ!!」
俺だ、トラファルガー・ローだ…っ、
肩を押さえられ、過呼吸ぎみの私は彼に、視点を置く。
彼の表情には、焦りと、心配の感情しか見えない。
左頬に、手が触れた瞬間、ひ…っ、と声が漏れた。
「は…っ、…はぁ、はぁっ、!!」
「シェリル…、」
「ううぅうう…っ、!! ろぉ……っ!!」
「なんだ、怖い夢でも見たのか? …大丈夫だ─────、」
俺が、傍にいる…。
彼は私を見つめながら、そう言い、ふわっ、と優しく抱きしめた。
涙が一筋流れ、スゥ…ッ、と視界から、気味の悪い「赤色」が消えていく。
手首をぐっ、と握られた、気持ち悪い感触も、消え去っていく。
「…う、ぁ……、」
「大丈夫だ、シェリル。…お前は─────…、」
──────────俺が、守ってやる。
「…………、?」
その言葉が、妙に引っかかった。
ギュッ、と服を握りしめ、彼を引き寄せる。
握っていないと、触れていないと、消えてしまうそう、だと感じた。
そんな私の心境に気づかず、彼は、微笑んで抱きしめる。
(…痛い……、)
彼の腕が、大きく見えた。
いつの間に、彼はこんなに私よりも大きくなったのだろう。
彼は、周りの人たちから、よく、表情が読めない子、と言われていた。
だけど、私は、彼が笑っているのも、悲しんでいるのも、すべて分かった。
(だけど…、分からない、)
瞳の奥に、宿っている、モノ。
優しい眼差しの奥に秘められた、前々から宿っていたもの。
今はそれが、確かに存在感を表している。
彼が今、何を考えているのか、理解できない、分からない…。
(なんで、泣いてるの…、??)
―心の底で、泣き喚いて…、―