第1章 デートの後で…
人ごみから抜けても鎌先は手を離そうとしなかった。耳まで真っ赤になりながらも、自分より小さな手を愛おしそうに鎌先は握りしめていた。
「鎌先くん、チョコありがとう」
「どういたしまして。……あ、あのさ、」
「なぁに?」
「……俺、のこと、好きだ」
「ありがとう。私も大好きだよ」
実にさらりと愛の告白を返されて、鎌先は内心たじたじになっていた。しかも「好き」のその上の「大好き」なんて言われた日には、鎌先は「今日で死んでしまうのではないか」と思わずにはいられなかった。
自分の目の前でふわりと笑うは、鎌先にとても眩しく見える。何かフィルターでもかかっているみたいに、彼女の周りはキラキラとしたものに囲まれているようだ。
鎌先は自分がよほどこの少女に惚れこんでいるのだと自覚せざるを得なくて、また顔を赤くさせていた。
「……つーか、が俺のこと好きなんて、全然思いもしなかったから、なんつーかまだ実感ねぇんだけど……」
と恋仲になったことを確かめるように、鎌先は握りしめた手にまたギュッと力を込めた。からも同じように握り返されて、じわじわとその熱を感じた鎌先は、口元が緩んでいくのを止められそうになかった。
しまりない自分の顔を、嬉しそうに眺めているが、鎌先にはとても可愛く見えた。
「…自分で言うのもなんだけどよ。俺でいいのか? 俺、ガサツだし、うるせぇし……」
そんな言葉を口にして、鎌先は自分の何が良くてが好意を抱いてくれたのか疑問に思った。
自慢できるものといえば、簡単には諦めない根性の強さと鍛えた己の体くらいで。
巷で人気の俳優やらタレントみたいに、爽やかな方でも無いし、細身の中性的な人間でも無い。個人の好みと言われればそれまでだが、自分の何がの気を惹きつけることになったのか、鎌先は気になって仕方がなかった。
「……鎌先くんてさ、声が大きいでしょ」
「あ? あぁ、まぁ……大きい方だとは思うけど……」
の発言の意図が読み解けず、鎌先は思わず首をかしげてしまった。そんな鎌先に、は小さくふふっと笑った。