第1章 デートの後で…
鎌先は自分のやってしまったことを深く後悔した。
「チョコ駄目にして本当、すまねぇ!」
再度謝罪の言葉を口にするも、やはりの反応は無かった。おそるおそる顔を上げた鎌先の目に飛び込んできたのは、のなんとも言えない表情だった。
「……これね、鎌先くんに渡そうと思ってたんだよ?」
「えっ……?!」
ようやく口を開いたから告げられた事実に、鎌先はしばらく呆然としてしまった。
それもそのはず今の今まで鎌先は、が笹谷にあげるとばかり思っていたのだから。
「はっ、俺に?! 何かの冗談か?!」
「お前酷いな。の好意疑うのかよ」
「いや、だって、えっ?!?」
突然思いもよらない事態に直面した鎌先の頭は混乱を極めていた。極めすぎて「これはドッキリか何かじゃないのか」なんて考えが頭をよぎっていた。
「、マジで……?」
「うん。本当だよ。…鎌先くんに、作ってきたの」
「……!!」
「えっ、ちょっと鎌先くん?!」
の視界から急に鎌先が消えた。その姿をが視線で追うと、床に散らばったチョコを拾い上げて口に放り込んでいる鎌先の姿があった。
「や、ちょっと待って、それ落ちちゃったし!」
「うま! めっちゃウマい!!」
「鎌先くん……」
胃腸が強いから大丈夫、なんて根拠のない理由をつけて、鎌先は箱からこぼれ落ちてしまったチョコをすべて平らげてしまった。
笹谷は半分呆れ、半分感心した顔で鎌先を見、それに気付いた鎌先は恥ずかしいのを誤魔化そうと悪態をついた。
「な、なんだよ。もったいねぇだろ、チョコが」
「別に何も言ってないだろ、俺。…なぁ、ほんとにこんなヤツがいいの?」
「うん、鎌先くんがいい」
「!!」
迷うことなくきっぱりと言い放ったに、鎌先は一気に顔が熱くなるのを感じた。鎌先が大騒ぎしてしまったために、こちらに注目している視線は相当数あった。
そんな中で直接的な言葉ではないにしても、『告白』ととれる言動をがするとは、鎌先は思いもよらなかった。
―なんか、俺めっちゃかっこ悪くねぇか?
鎌先の胸中は複雑だった。
も自分のことを好きでいてくれた、という事実は鎌先にとって喜ばしい事であった。