第1章 デートの後で…
控えだった私が、コートに駆り出されることになった。思いもよらなかった展開に、私は思わずどうしていいのか困った顔で鎌先くんを見てしまう。
「大丈夫、練習は裏切らない! なら、出来る!」
「……うん、頑張る。ありがとう、鎌先くん」
コートに足を踏み入れるのは、怖いと思っていた。
けれど鎌先くんの明るい笑顔が、私の背中を力強く後押ししてくれた。単純なやつだと思われるかもしれないけど、鎌先くんに「大丈夫」だって言ってもらえたから。
本当に大丈夫だと思えたんだ。
けど、やっぱり体はガチガチで。
練習したように動いてくれなかった。
始めは力強く「ドンマイ」と声をかけてくれたチームの子達も、私のミスが続いていくと次第に声のトーンが低くなっていった。
肌にチクチクと、冷たい視線が刺さるのが分かる。
リードしていたのに、私が入ってから逆転されてしまった。その原因はほとんど私だったから、みんながため息をついてしまうのも仕方ない。
仕方ないと分かっているのに、心が張り裂けそうになっていた。冷たい視線を一度意識してしまうと、体は余計に動かなくなる。一度のミスが次のミスを呼び、相手も私が下手なことに気付いて積極的に狙ってくるようになった。
コートの外で応援している人達の視線も、自分に注がれているような気がしてくる。何事か囁きあっているのは、私の下手さ加減について口にしているんじゃないか? なんて被害妄想かもしれないけど、思わずにはいられなかった。
「……さん、無理して拾わなくてもいいから。私らに任せてくれない?」
「…あ、うん。ごめん……」
隣のクラスの子の顔は、張り付いたような笑顔だった。本心を見てしまうのが怖くて、謝ってすぐに目を伏せた。
早く試合が終わって欲しい。
やっぱり一朝一夕の練習じゃ駄目なんだ。私がいちゃ足を引っ張るだけなんだ。
気持ちが落ち込んで、自然と視線は地面へと向かってしまう。
そんな私を鼓舞するように、大きな声が飛んできた。
「! 下向くな!! お前ならやれる!! 出来る!! 俺は信じてるぞ!!」
声の主を見れば、握りこぶしを振り上げて怒ったように叫んでいる。鎌先くんの熱い応援に、私だけでなく他のみんなの耳目も集まっていた。