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紅の君

第3章 関ヶ原


「待っておるぞ豊久!久忠!

待っておるぞ薩摩で!待っておるぞ!

死んだら許さぬぞぉぉ!!」

まるで先程までここが死に場所だと覚悟して

いた事を見透かされたような言葉であった。

「良か親父殿だなぁ久忠!

俺たちは幸せ者だ!」

『はい。

見に余る程の嬉しきお言葉で御座います。

この久忠、ここで武者働きをせねばなり

ませぬ。』

「おう、一番武者働きせねばならんのぉ!」

そう言い豊久は刀を握り直す。

「火蓋を切れぇ!狙えぇ・・・・放てぇ!!」

豊久の掛け声とともに銃声が周辺を支配

した。戦が再び始まる。

敵勢の足並みが崩れたところで久忠が

斬り込む。その速さはまさに神速。

島津久忠の最大の武器はその神速から

繰り出される脇差二刀流である。

その小さな体を活かした攻撃は敵を翻弄

するのに適任である。

そして小さな影に続いて紅の大きな影が更に

斬りかかる。前者の攻撃とは真逆の、一撃に

全てを込める攻撃法は相手を全滅させるには

十分すぎる力量であった。

「島津中務少輔豊久!推参!!」

「島津中務大丞久忠見参!!」

この二人の斬撃が連なる時、島津家始まって

以来の最強の“退け口”が完成する。

その練度、斬撃の鋭さに敵将の井伊直政も

「見事なり」と感嘆の言葉を漏らす。

だが所詮は死兵共である。この井伊兵部

少輔直政に敵うはずがないと自負した。

実際の所、島津の軍勢は押されていた。

兵子たちは皆ことごとくやられていた。

残るは豊久と久忠のみ。

「俺の手柄になってもらおう。」

そう豊久と久忠を見下した。

しかし彼らは笑っていた。不敵に。

「何を言いやがるくそぼけ。首級になる

のは俺たちじゃない。」

「『貴様よ!!!』」

そうして豊久は大将の井伊直政に

斬りかかり、久忠は主の戦闘の

邪魔が入らぬよう周りの敵兵を相手する。

「殿を守れ!」敵兵が一斉に集まった。

そして井伊直政の周りには槍の壁が出来る。

豊久は少し見つめ、「良か」と小さく呟き

舌なめずりした。久忠も興奮気味に

息を大きく吸って大きく吐いた。






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