第7章 愛しい影
『本当か・・・!あいがと、久忠・・・
目を瞑ってくれ・・・』
「は、はい・・・!」お互い緊張しながら顔を
近づけていく。
そして両者のくちびるに柔らかいそれが
触れる。最初は優しいものだったが、
豊久の方が抑えが効かなくなってきた。
次第にその行為は激しさを増し、水音が
耳に入る。
『んっ・・・んむ・・・!ふっ・・・』
「はぁ・・・っ、野風・・・っ!」
『っぷあ・・・っ!と、よひさ、
さまぁ・・・もう・・・やめっ・・・んん・・・!』
「ん・・・は・・・すまん・・・久忠・・・」
『いえ・・・私は大丈夫です・・・』
久忠は火照った顔を背けるようにして豊久と
距離をとる。・・・が、それを豊久が許さない。
「久忠・・・なんで逃(に)ぐっ?」
『そ、れは・・・申し訳・・・ありません・・・』
「顔を見せっくれ・・・久忠・・・
頼(たの)んから・・・」
豊久は請うように久忠に詰め寄る。
久忠はふるふると首を横に振りって
顔を見せようとはしない。だがその耳は
真っ赤に染まっていた。それを見た豊久は
ふっ・・・と笑を零し、子をあやすように頭を
くしゃりと撫で、久忠の顔を見ないまま己の
方へ抱き寄せそのまま眠りにつこうとする。
「そげん顔が見られたくないなら
無理(むい)強(つ)えはせんぞ。俺(おい)の
願いを叶えてくれてあいがとな、久忠」
『・・・・・・お役に立てて何よりですっ・・・』
そのまま二人は恋人のように抱き合ったまま
夜を明かした。