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紅の君

第4章 廃城


「そういうお前はだれぞ。」

信長が豊久に向け問いた。

「島津、島津豊久。島津家久が子じゃ!」

豊久は誇らしげに答え、それに久忠も続く。

『同じく島津が久忠と申します。私は島津

家の者ではありませぬが、恐れ多くも島津

を名乗らせて頂いております。』

答えが返ってきた信長は少し考え、そして

「島津・・・?だれ?」と豊久たちを見上げ、

「どこ?どこどこ?あぁぁ!九州の端っこの

ものすごいど田舎の!」と豊久たちを煽る。

それに模範的に豊久が「殺す!」と怒り出す。

その話題に与一も「島津殿なら私の御世にも

居られましたぞ。確か九州の端の方の

方でした。嗚呼、代々田舎の方々なのですね」

と火に油をそそぐような口ぶりで話す。

「全員殺す!」豊久は刀を振り回す。

それに待ったをかけるように「あまり動くと

死にますぞ。」と与一が言った。豊久の

腕からはたらりと血が出てきていた。

『豊久様!血がっ・・・!』

「頑丈な奴じゃ。まぁ座れ。」動き続ける

豊久を信長が制止する。

「信長・・・と言うたな。本能寺で死んだ

はずではないのか?お前は死んだはずじゃ!」

豊久の問いに信長は鼻で笑う。

「は!俺があんなハゲに殺されてたまるかよ。

なんとか脱出してくれようと乱丸連れて寺内

逃げ回っておったらおかしな所に出た。

奇妙な石造りの通路の真ん中に男が居てな、

通路には無数の扉があった。」

信長の話に久忠が真っ先に食いつく。

『私達も会いました!その男に!

関ヶ原の大戦の中で!そうですよね!

豊久様!』

「おう!確かに会ったの!退け口の中で!」

島津二人の話に今度は信長が食いつく。

「関ヶ原?美濃のか?」

『はい。石田勢と徳川勢の大戦で御座います。

貴方様が亡くなった後、豊臣秀吉公が関白と

なり、天下を差配致しました。秀吉公の家臣に

居らしたのが石田三成公と徳川家康公で

御座います。しかし、石田三成公率いる

《文治派》と相対する《武断派》の亀裂

が御座いました。それこそが関ヶ原の戦いの

一番の原因とされています。それ故、石田三成

公と徳川家康公の間で大戦が繰り広げられて

いたので御座います。』

久忠はつらつらと史実をならべてみせた。
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