第4章 欲しいのは君よりストロベリー
そんな勢い出るのかってくらい
大きな音を立てて開いた扉
全員がその扉に注目する
そこには満面の笑みで仁王立ちしている
椎の姿があった
…いや何してんだアイツ
両手に袋ぶら下げて
はっはっはっと高笑いしている
パッと見なくても怪しい
あれで本当に中学三年の女子かよ
「椎ちゃんだー!!!
休みじゃなかったの?」
「え?遅刻していくから昼は全員集合で
って言ってなかったっけ?」
「言ってねーよ」
「言ったつもりでした!!!」
ごっめーん!と口では言ってるが
全く悪びれる様子はない
「んで、なんなんその荷物」
「ふっふっふ…これはねぇ」
「おい、椎。こっち来い」
…そう言えば跡部ブチギレてるんだった
いつもより低い声に思わずこっちの
背筋が凍る
口元は笑っているが
あれ確実に怒ってんだろ
当の本人は気づく様子もねぇ
「なになに跡部サーン!行くけど!」
目当てのものを堪能してきたのか
いつもならブツブツ減らず口叩くのに
今日の椎はえらく素直だ
トコトコと跡部に近づき
跡部の横にちょこん、と座った
跡部も少し驚いてるみたいだ
「てめぇ、部長の俺様に何も言わねぇで
遅刻たぁ偉くなったもんじゃねぇか」
「えー同じクラスの宍戸に言ったよ?」
「部長に直接連絡は絶対だって
伝えてあったよな?」
「そうだっけ?次から気をつけるわ!」
「次だt「それよりこれ!!!」あぁ!?」
叱られながら(堪えてないが)椎が袋から
取り出したのは丸みを帯びた長方形の包み
よく見たら袋には
クレープ工場、の文字とクレープのイラスト
「跡部に1番に選ばせてあげる!
どの味がいい?」
「はぁ!?何の話だ!!」
「…椎ちゃんもしかして
それ全員分買ってきたの?」
「そー!!すっごい美味しかったから
皆にも食べてもらいたくてさ!!
朝から並んでたら学校間に合わなかった!」
どうやら椎は自分が食べたいだけで
学校を午前中サボっていたわけでは
ないらしい