第2章 きっかけ
急に女が喋るものだから、キッドはビックリして思わず半端後ずさる。
「今日の朝…た、助けてくれてありがとうございました」
女は長い髪の毛をバサっとさせながら深く頭を下げた。
ー 今朝。
自宅までシオンを送り、シオンの家の近くのバス停からバスに乗ってそのまま学校に向かった。
すると、いくつめかのバス停で、昨日の転校生が乗車してきた。
キッドは1番後ろの座席に座っていた為、転校生は全く気づいていない様子だった。
(たしか、イオリア・レイハとか言ってたな)
なんだか、カバンを漁って分かりやすいくらいオロオロしている。
きっとサイフでも忘れて、降りられなくてどうしようと戸惑っているんだろう。
彼女の背後に歩み寄り後ろから2人ぶんの乗車賃を運転手に渡し、彼女の背をかるく押してバスから降ろさせた。
そんなことをしたことが自分らしくなく、照れ臭くて、ビックリして呆然と立ち尽くしている彼女の横をスッと通り過ぎ足早に校内へ入って行ったのだった。