第4章 12月16日【あと8日】
【死神side】
彼女が家を出たのを確認してから、大きなため息をつく。朝ご飯に手を付けて完食はしてくれたものの、どこか怒っているような面持ちだった。
「昨日のこと、怒ってる……とか?」
朝の挨拶とか素っ気なくしすぎたのかな……。
でも!
そりゃあ俺だって昨日のことをかなり気にしてる訳で。申し訳なく思ってる訳で。だから、緊張してしまうのも無理ない訳で。
なんて、全部言い訳か。
彼女に一つや二つ、隠し事があったって別におかしくはない。今までだってそうじゃないか。だから、変に深入りするな。
また立ち直れなくなるのは俺なんだから。
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「椎名先生、おはよう」
「っ!?は、はいっ!おはようございますっ!」
肩を叩かれ、反射的に身構えてしまう。相手が森下先生だと分かったのなら、なおさら。
「ございます?」
「え、あっ………おはよう」
確かに同い年だ。同期だ。
でも、昨日の今日でいきなりタメ口っていうのはなかなかハードルが高い。それに、昨日の……こ、こここっ、告白っ……
「顔真っ赤。寒いから?それとも……昨日のこと、意識してる?」
耳元で言われ、肩がびくりと跳ねる。
「ふぁっ!?ここ、学校!廊下!ストップ!」
距離が近付いた森下先生を両手で押しのけ、ばれないように深呼吸。
「ごめんって。椎名先生って、何かある度に俺に牙を向けてくる印象が強かったので、そんな可愛らしい反応が出来るんだなー、ってからかいたくなっちゃったんです」
森下先生のからかった様な口調に少し、むっとする。
私だって女だし。
告られたの初めてだし。
そりゃ意識……とか、しちゃうもん。
こんなこと言ったらもっとからかわれそうだから、口が裂けても言わないけど。