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死神に教わる甘え方。【R-18】

第2章 12月14日【あと10日】


「椎名先生、お先に失礼します」

「あ、はい。お疲れ様でした」

時計を見ると、もう7時になっていた。

「8時までに帰って来いって言われたんだっけ」

「誰にですか?」

耳のすぐ近くで声が聞こえて、体がぞわりと寒気立つ。

「森下先生……。なんですか?」

また、森下先生か。
本当にいい加減にして欲しい。いつだって彼は私の邪魔をする。正直言って、迷惑だ。

「なんですかって……質問返しされても困るんですけど。俺は、誰に8時までに帰って来いって言われたんですかって聞いてるんです」

「それはしに────」

いやいやいやいや。
言えるわけがない。頭がおかしいやつって思われる。それで、先生や生徒達の間に変な噂が流れて……。

ああ、想像できる。
椎名先生ついに精神的にやばくなっちゃったみたい、と学校中のみんなに囁かれる日々が。

「……関係ありません。プライベートなことですし」

内心ひやひやしながら、森下先生を見上げて突き放すような言葉を口にする。

「ふーん。あっそ。別になんでもいいですけど」

イッラァと来ました。
その言い方は酷いんじゃない?
そっちから聴いてきたくせに。

「そうですか。それじゃ、私帰るんで。お疲れ様でした」

大人なんだから、これくらいの苛立ちくらい我慢できる。そう。我慢でき……

「興味ないらしいので別にどうでもいいでしょうけど、私はあなたみたいな男性が一番苦手です。よかったですね。あなたはどうやら私のことを嫌っているようですので、これでおあいこ。犬猿の仲、ってやつですかね。それでは、お先に失礼します」

頭を下げてから森下先生の顔を優越感にひたりながら見る。

「………っ。そーですか。お疲れ様でした」

少し、目の周りが赤いような気がした。
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