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死神に教わる甘え方。【R-18】

第2章 12月14日【あと10日】


【森下side】

「別に何だっていいじゃないですか。森下先生には関係ありません」

そう言って職員室を出て行く彼女の背を呆然と見つめる。結局、手紙は俺の手から奪い返さなかった。

「……んなもん、いらねーよ」

一瞬だけ躊躇ってから、それを破り捨てる。なぜ躊躇ったのかは分からない。だが、理由を付けるとするなら、少し罪悪感が湧いた、ということだろうか。恐らく、この手紙の主は彼氏だろう。彼女の為を思って書いた手紙を破り捨てるという行為が、彼女のことを裏切る行為と同じのように思えたのだ。

《森下先生には関係ありません》

何度も何度もリピートされ、俺の心を抉っていく。

分かっている。
彼女が俺のことを嫌っていることくらい。

彼女を意識するようになったのはいつからだろうか。彼女のことが好きだと気づいたのはいつだっただろうか。

気づけば意識していて、気づけば好きになっていた。





《森下くんってしっかりしてるわね》

これが俺の周りにいる奴らの口癖だった。

ちょっと近所の人に挨拶をしただけ。
ちょっと落ちていたゴミを拾っただけ。
テストで100点だって当たり前だった。あんなもの100点を取るために作られたテストだ。

周りが《すごい》と俺を褒める度に
周りが《しっかりしてる》と俺に言う度に
周りが俺に仕事を任せる度に

俺は自覚した。

ああ、俺はしっかりしているんだ。俺にしか出来ないんだ。周りには出来ない奴が多すぎる。

そう思い、自惚れた。

そして気づけば大人になっていた。
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