第2章 12月14日【あと10日】
なんで?
桜の可愛らしい風呂敷は私がいつもお弁当を入れているものだ。忘れたはずのそれが今目の前にある。
「ボケてたんですか?」
馬鹿にされてる。
変な目で見られてる。
「……?」
風呂敷を解くと、中に弁当と一緒に紙が添えられていた。二つ折りにされたそれを開く。
《お弁当を作っておきました。お口に合うか分かりませんが、ぜひ召し上がってください。それと、今日の夕飯はグラタンです。8時ちょうどが食べ頃になるように作るので、それまでに帰宅してください。》
「ぶっ!?」
あんの死神……!
手紙を手に持ったまま硬直した私を不思議に思った森下先生が、私の手から手紙を奪い取る。
「うわ、ちょっ、やめてください!」
くそぅ!
森下先生(182cm)と私(155cm)じゃ奪い返せない!認めたくはないけど、身長差がありすぎて手が届かない!
「なんですか、これ」
「そ、それはっ、そのっ」
何か言い訳。言い訳!
森下先生に死神が家にいるってバレたらどうしよう!
いや、まず死神が家にいるとか疑う人なんていないんじゃ?
…………。
じゃあ、大丈夫か!
「別に何だっていいじゃないですか。森下先生に関係ありません」
今日の夕飯はグラタンかー。
グラタンなんて久しぶりだなー。
そんなことを考えながら、ルンルン気分で教室に向かった。