第2章 12月14日【あと10日】
「はあ……。私、森下先生に構ってる時間ないんで」
早く何か買いに行かないと。
コンビニで何かを買って………いや、でもそうすると生徒達を教室に残して外に出ることになっちゃう。それはだめだ。その間に何かあったらどうするの。
「だからどうしたんですかって最初から聞いてるじゃないですか」
言ったら馬鹿にする癖に。
「………弁当を作るの忘れたんです。だから弁当がないんです」
あー、屈辱。
この先生に言うハメになるとは。
やっぱり鈍臭いんですね。ぷぷぷ。
って言われるくらいの覚悟をしておかないと。
ファインティングポーズを取り、森下先生をきっと睨みつけるように見つめる。
「なら俺が買ってきましょうか?俺は担当のクラスないですし。なんなら、俺の食べます?」
「次言ったらグーパンチが飛びます……よ?え?」
「なんでですか。こわ」
想定外だ。
まさかそんな優しいことを言ってくれるだなんて!見直した!
「じ、じゃあ、お言葉に甘えて……」
「まあその代わり、今日は酒を奢って下さいね」
「遠慮します」
森下先生は所詮、森下先生なのだ。この人に頼ろうとした私が馬鹿だった。やっぱり全部私がしないと。
「結構です。今日はお昼無しで頑張りますので」
出勤中に買った水を取りだそうとカバンの中を覗く。
「え、うそ……」
「どうしたんですか?」
「………ある」
「何がですか?」
ニヤニヤしながら、森下先生が私のカバンを覗く。レディーのカバンを覗くなんて最低!だとかそういうのは置いておいて。
「弁当、ありました」