第2章 12月14日【あと10日】
いつものように腕時計を身につけ、カバンを肩にかける。
そして黒いパンプスを履く。
パンプスは私の武器だ。背が低い私が男の教師のような威厳があるとは思わない。だからこそ、パンプスを履いて、ひとりの女として戦うのだ。これは私を守るための防具だ。
「椎名様。いってらっしゃい」
「………」
いってらっしゃい。
そう見送られるのはいつぶりだろうか。
悪くない。
むしろ、なんか心が温かくなる。
「……いってきます」
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【死神side】
いってきます。
彼女がそう消えるような小さな声で呟いた。
それを見て、俺は思わず固まった。
がちゃん、と音を立ててドアが閉まった瞬間に俺はその場にしゃがみこむ。
「はぁあーーーー!」
反則だ。
あれは反則。
「可愛い……」
少しはずかしそうに微笑んだ姿がとても愛おしかった。俺が死神なんかじゃなかったら、この腕で抱きしめたいくらいに。
今日は12月14日。
運命の日まであと10日。
今度こそ────。