第2章 12月14日【あと10日】
「小さな手……」
「え?あ、ちょっ」
死神の白い手が私の手を包み込む。
ひんやりしているのに、すごく温かかった。
「こんな小さな手で全てを受け止められるわけがありません。あなたは甘えることを覚えるべきです」
「甘える……?」
私に甘えることなど出来るのだろうか。
甘えるだなんて今更恥ずかしいし、人に甘えたことなんてあっただろうか。
「そうです。今は慣れなくても、その内出来るようになります。これからは俺に甘えてください」
「あんたに?」
「ええ、そうです」
きらりと仮面の奥に光る彼の目が見えた気がした。この仮面からは何も表情なんて読み取れない。でも、何となく分かる。彼は怪しくなんかなくて、彼の善意で行動してくれてるって。
「………うん、頑張る」
死神の口の端がにいっと上に上がった。
「はい!頑張ってください!俺も頼られるように頑張りますから」
私の手を握る彼の手に力が込められる。
「うん、わかった。ありがとう。わかったから、とりあえず手を離して」
「えっ?あ、ああ!」
ぱっと手を離され、死神が私からすごい勢いで離れる。大袈裟だ。あれか。初心なのかね。U☆BU。
「ねえ。この浮かんでる食器って」
「あ、ああ、おおおっ、俺が!俺がしました!」
キョドりまくってる。
純粋すぎるのか。それとも、シャイすぎるのか。
「とりあえず、下ろして。早く洗濯を回して、食器を洗わなくちゃだか………ら?」
「あーもうっ、言ったそばから!俺がやるって言ってるでしょう!?早く出勤してください!それで朝のうちにやることやって、夜は8時までに帰宅してください!いいですね!?」
「は、はい」
なんか、この死神………変。