第19章 お引っ越し
それを思い出させられて、自分一人で何とか出来る程に強くはない。
だからって、諦めて良い場面と、諦めちゃ駄目な場面はある。
「…誰かの、近くに住むのは駄目なんですか?」
考えるだけ考えたフリをするべく、たっぷりと間を空けて妥協案を出した。
全員が揃って首を振るものだから、許されないらしいのは分かる。
「俺なら昔っからりこの事、知ってるから安心だろー?」
「俺と一緒だと、毎日の食事の管理が出来るから楽だと思いませんか?」
「大熊さん、君はうちのタレントだよ。手は絶対に出さないから、安心して。」
「言い訳しやすいのは、俺んトコっつーの、分かってるよな?」
口々にアピールポイントを並べられても、選ぶ気にはならない。
そんな中、インターフォンの音が鳴った。
一瞬で、凍り付く空気。
誰もが、警戒をした顔で玄関の方を眺めている。
「大熊さん、出ちゃ駄目だよ。」
「…でも、知り合いだったら…。」
「じゃ、俺が出てやるよ。」
「アンタだけじゃ不安なんで、俺も行きます。」
縁下さんに止められて、迷っている内に光太郎と京治くんが玄関へ。
数分して、戻ってきた2人と、来訪者であろう人。
思ってもいなかった人物が来て、驚きで固まってしまった。