第39章 サプライズ
撮影が終わり、撤収。
来た時と同じく私は力さんの車で帰る。
帰る最中、力さんが今日のサプライズについて色々話してくれた。
私が変にニュースとかで騒がれたくないだろうと思って、中々プロポーズ出来なかった事。
それを、あろう事か社長に気付かれて、今回の話になった事。
プロポーズの時点で情報が出てたら、実際に結婚しても、そこまで騒がれないだろうって社長の気遣いだったらしい。
「…それでも、一時的には話題になるだろうし、テレビに映るのはりこが嫌がると思ってたんだけどな。」
力さんにとって、一番の驚きは私が嘘の街歩き番組出演を了解した事だったみたいだ。
そんな話をしている内に私の住むマンションに着いて車を降りる。
力さんも降りてきて、私の前に立った。
「…大熊りこさん。俺と結婚してください。」
すでに薬指に指輪が光る左手を握られて、再びされるプロポーズ。
「え?あの、なんで?」
もう返事はしているのに、また言われた意味は分からない。
正直な口から疑問が出てきた。
「さっきは、りこが指輪ばかり眺めてて目を見れなかったし。」
言葉通り、力さんの真剣な目が、私の目を捉えている。
「りこの返事は、言葉で聞きたかったから。」
「…よ、喜んで。これからも、宜しくお願いしま、す…。」
望まれた事をしてあげたかったけど、恥ずかしくて声は上擦って、途切れてしまう。
「こちらこそ、宜しく。」
そんな返事でも満足してくれたみたいで、優しい笑顔が近付いて。
唇が、重なった。
‐end.‐