第19章 お引っ越し
数分もしない内に京治くんの腕が緩む。
解放されて、何があったか確認するように光太郎の方を見ると、手に持っていたティッシュの塊を背中側に隠した。
「りこさん。木兎さんが貴女には見せない方が良いと判断したものです。
取り合えず、部屋に行きましょう。家バレしたなら、事務所に話してホテルか何処か、避難先を手配して貰わないと。」
光太郎の手の中が気になって近付こうとしたのを止められ、部屋へと促される。
「木兎さんは、ソレ、りこさんの目に付かない場所に捨ててから来て下さい。この人の部屋のゴミ箱には入れたくないでしょう?」
「…そ、そーだな。」
中身を知っているらしい京治くんは、淡々とした声で指示だけして、私と一緒に部屋まで来てくれた。
見ない方が良いと言われると、余計に気になるのが人間の性。
虫の死骸とか、見るのは嫌でも、言葉で言われるだけなら大丈夫だ。
「…ねぇ、何が入ってたの?」
「知らない方が良いですよ。」
部屋に入ってから、当然の疑問を口に出してみる。
拒否をするように、眉を寄せて首を振る姿に更に気になった。
「言葉として聞くくらいなら、平気だよ。」
「聞くだけでも、気分が悪くなるようなものでも、ですか?」
聞いたくらいで、気分が悪くなるのは、よっぽど想像力が豊かな人くらいだと思う。
残念ながら、私は想像力が欠如しているから危機管理が出来ない訳で。
大丈夫だと示すように頷いた。