第19章 お引っ越し
すぐに着いた1階のロビー。
端に設置されている集合ポストに近付いたけど、異臭はしない。
そこに立っていたスーツ姿の男性に、今連絡を貰ったと話し掛ける。
ポストを開けるように急かされて、ダイヤルを回した。
そこで、変な事に気付く。
ポストから、液体が漏れていると聞いていたけど、そんな形跡がなかった。
背筋が凍る。
ロックは解除したけど、怖くて開けられなくなってしまった。
後ろにいる男に、代わりに開けて貰おうかと思ったけど、嘘を吐いている可能性がある以上は頼らない方が良い。
そこで、何かあったら一番に相談、を約束していた京治くんに連絡する事にした。
自分で開けるのは怖いから人を呼んだ、と男に伝える。
少し考えるような仕草の後に、次の仕事があるだのなんだの、理由を付けて去っていった。
問題が起きている状態で、確認もせずに次の仕事に行ってしまうなんて、有り得ないと思う。
やっぱり、今の男が何らかの理由で嘘を吐いていた事が分かって。
ちょっとした事でも気付いて、警戒した自分を褒めたくなった。