第18章 3回目
楽屋までは、殆ど喋らずに戻り、中に入った途端に光太郎に抱き締められる。
「りこ、ドコも怪我してねぇよな?大丈夫だよな?」
「…事故に遭いかけたのは何週間も前だし、逃げる企画の時はプロテクター付けてたから、平気だよ。」
ちょっと、泣き出しそうな光太郎の声が聞こえて、宥めるように背中を叩いた。
心配したから、怒ってくれていたのが嬉しくて、つい笑顔が零れる。
「怪我は無くても、バイクで狙われたのも、突き飛ばされたのも事実でしょう。」
その、良い雰囲気を壊すような京治くんの声は未だに冷たい。
光太郎から離れて、そちらを見ると眉を寄せていた。
「わざわざ、何でも屋なんて頼まなくても、俺達に相談してくれれば送り迎えくらいしますよ。
貴女、顔が売れてきているんですから、多少の特別扱いは許容されます。」
「…何でも屋は、事務所の方で頼んでくれてたから、それを無視して他の人に頼むなんて出来なかったの。ごめんね。」
謝っても、京治くんの方の怒りは治まらないらしい。
拳を力一杯握っているのが分かる。
「それでも、危ない目に遭った事を他の人に聞かされた俺達の気持ち、分かりますか。先に、相談して下さい。何の為に、りこさんのトレーニング先に立候補したと思ってるんですか。」
声が、少し掠れている。
泣いている時みたいな、鼻声だ。
光太郎と京治くんは、この世界に入る前からの知り合いなのに。
他の人に先に相談した。
それを怒ってるんじゃなくて、悔しがっている風だった。