第3章 退職
全部を聞いた澤村さんは、退職届けを封筒に戻して立ち上がる。
「これは、社長の方に渡しておくぞ。ま、頑張りなさいよ。
辛かったら、連絡してきても良いからな。」
私の横を通り、肩をポンっと叩いて出ていった。
私みたいなのが、あの企画のシンデレラなんて、まず疑うのが普通なのに。
それを、あっさり受け入れてくれて。
更に応援までしてくれて。
こんな良い上司から離れるなんて馬鹿な事をした、と少しだけ後悔が過った。
それでも、撤回しないように届けを選んだのは自分だ。
今から澤村さんを追い掛ければ間に合うかもしれないけど、変える気は、ない。
その後、社長から呼び出され、正式に受理されて1ヶ月後に退職が決まった。
それは朝礼で発表されて、もう本当に後戻りは出来ない。
残りの1ヶ月。
せめて、立つ鳥後を濁さず、で去れるように引き継ぎ作業に追われる事になった。