第3章 退職
色々とあった休みが終わり、会社に出勤する。
まずは、直の上司の元へ。
「澤村さん、お話があるんですが。」
「…あぁ、どうかしたか?相談事か?」
「ここでは、ちょっと…。お時間ありますか?」
チラりと他の社員を見る。
流石に、人前で堂々と話せる事ではない。
澤村さんは、分かってくれたようで立ち上がった。
2人で会議室に入る。
間を空けたら、言えなくなりそうで。
澤村さんが着席したと同時に封筒を差し出した。
「…願い、じゃなく、届け、で良いんだな?」
退職願いは撤回出来る。
退職届けは撤回出来ない。
これも、ちゃんとネットで調べて書いた事。
「はい。」
気持ちを変える気はないから、届けにしたのだ。
頷いて意思の強さを伝える。
「困った事があるなら、先に言ってきなさいよ。少しは待遇を変える事も出来なくはないんだから、な?」
澤村さんは、引き止めようとしてくれているんだろう。
今なら、まだ自分しか見ていないから取り下げても良いと言ってくれた。
ずっと首を振ったりしていても、埒が明かない。
「澤村さんは、1年シンデレラの番組をご存知ですか?」
「あ、あぁ。見た事はあるが…。」
一身上の都合にしていた理由を、ちゃんと話す事にした。