第3章 退職
出勤する、最後の日。
私がいた営業部では、送別会をしてくれた。
私が一応は主役な訳だけど、単に飲み会の理由にされただけのようで。
普段から地味に生きて、特に仲の良い社員なんかいなかった私は完全にオンリーの状態だった。
別に、ちやほやされたい訳じゃないけど、数年でも勤めた会社だから、誰にも相手されないのは淋しい。
独りで、ちびちびとお酒を飲んでいると隣に気配。
空いていた筈の、私の横に営業の月島さんが座っていた。
何を隠そう、この彼が、私をブスだと言った張本人である。
「君、さ。」
「はい?」
「僕の所為で辞める、とか?そうゆうの、しないでくれる?」
いや、確かにきっかけではあるけども。
フラれただけで、生活掛かってるのに会社を辞める訳がない。
たまたま、1年シンデレラに選ばれた。
別に、仕事を辞める必要はないと言われた。
「別に、月島さんの所為じゃないので気にしないで下さい。」
辞めると決めたのは、私。
誰の所為で、じゃない。
自分の為に、だ。
首を振って否定を示す。
多分、これから先は関わる事のない人。
テレビで、少しでも有名になった私を見て後悔してくれたら、それでいい。
それ以上は会話をするでもなく、時間だけが流れていった。