第18章 3回目
及川徹の所で時間が掛かった為、他のゲストには本当に挨拶だけで済ませる事になった。
まぁ、他のゲストと言っても前回と同じく光太郎と京治くんだったから、構わないのだけど。
光太郎は、相変わらずの感じで勝手に喋り始めそうだったから無視をする。
それで、しょぼくれられたけど京治くんが何とかしてくれるだろうから気せず、楽屋にさっさと戻った。
それから数十分後、始まる撮影。
今回はバラエティーを中心に幾つかの番組にも出ていたから、1つ1つのVTRが短く編集されている。
流石に3回目ともなれば、緊張もせずにトークに入り、最後まで混乱する事無く撮影を終えた。
「ね、シンデレラちゃん。女同士でご飯でも食べに行かない?」
セットから離れて楽屋に帰ろうとした時に、お声が掛かる。
振り返らなくても誰かは分かっていたから、どう返答しようか迷っていた。
「すみません。彼女、食事制限あるので…。」
私と、女の間に割って入ったのは京治くん。
「そーだな。りこ、最近忙しくてトレーニング来てねーから太ったもんなー。」
余計な事を言いながら、光太郎も近寄ってきた。
「それより、及川さんがお話あるみたいですよ?」
京治くんが手の平で、少し遠くに居た及川徹を指し示すと、女はそっちに向かっていく。
それを見送ってから、振り返った京治くんの目も、光太郎の目も、怒っているかのように冷たかった。