第17章 お食事会
仲居さんが去った後、こちらに向き直った及川徹と目が合う。
ウィンクをされても、何を返せば良いか分からなかった。
「…何?シンデレラちゃん、俺に見惚れちゃった?」
「それは無いです。」
ふざけた事を言われたから、すぐに首を振って否定する。
「即答とかヒドい!」
ショックを受けたような仕草をするワリに、顔は笑っている。
この、ちょっとチャラいような、緩いような感じで話すのは及川徹のコミュニケーション方法なんだと分かった。
「おい。」
緩かった空気を引き締めるような、岩泉さんの低い声がする。
「お前、コイツに言う事あるべ?」
「…え?岩ちゃん、アレ本気だったの?今更蒸し返しても、シンデレラちゃんだって困っちゃうでしょ?」
目の前のやり取りで、何の事かは分かった。
ブログの件だろう。
でも、及川徹の言う通り、今更何か言われてもネットに出てしまった文章は取り消せないし、困るのが本心。
「い、岩泉さん。私、怪我とかした訳じゃないので…。」
オーバーに両手を顔の前で振り、大丈夫、を示して宥める。
「…ほら、岩ちゃん。本人が大丈夫って言ってるんだから、この話は止めるよ?
折角の美味しい料理に無粋な話はいらないでしょ。」
及川徹も、それにノって宥めてくれたから、岩泉さんもそれ以上は何も言わなかったけど。
納得は出来ていないようで、舌打ちをしていた。