第17章 お食事会
約束をした、その日。
昼過ぎまで、バラエティーの撮影があって、黒尾さんの送りがついていた。
撒く訳にもいかず、正直に予定がある事を話したらついてくると言う。
外で待っている、と話す彼に申し訳ない気がして、一緒に食事をしないか誘った。
「お前ね、人の奢りって時に勝手に人数増やすのナシだろ。」
「確かに、そうですね。じゃあ、帰る前に連絡しましょうか?」
「おぅ。そうしてくれると助かる。」
そんな訳で、予約をしているお店の前で黒尾さんとは別れ、1人で店内へ。
このお店は、有名人がよく訪れるようで、結構融通がきく。
及川徹と密会なんて週刊誌にでも載ろうものなら、後が怖い。
だから、私が先に入る事も、時間をずらして2人が来る事も了承してくれていた。
案内されたのは、個室。
隣の部屋とは、襖で仕切られているだけだから、声くらいは漏れてしまうけど、2人きりではないから大丈夫だろう。
それでも、高級店の、しかも個室に1人でいるのは緊張してしまって。
早く2人が来ないかと、何度も出入り口を眺めたり、部屋に設置されている掛け軸とか、生け花とかを眺めたり。
かなり、挙動不審な行動をしていた。