第14章 アイドルの影響力
暫くして、見せられたスマホの画面。
映し出されたのは、事務所でも見た、及川徹のブログ。
黒尾さんの指が、画面を滑ってスクロールされる。
そこに、書かれていたコメントに絶句した。
「アイドルってぇのは、ちょっとした発言でファンが勝手に盛り上がるからな。たまに、こういう過激なのも出てくるワケよ。
…んで、お前ンとこの社長に連絡したら、1人で出ていった、とか。」
「ごめんなさい。」
ここは、謝るしかない。
このブログの事を知っていて、ファンが私を嫌う可能性すら考えてなかったから。
「ま、お前の顔が売れててくれて助かったぜ?大熊りこがいた、って話してる奴等を辿れば見付かったし。」
付け回していたんじゃなくて、捜してくれたのかと思うと、苛々を向けた自分が申し訳ない。
「なんか、ごめんなさい。」
八つ当たりした事も、見ていたクセに助けなかったと疑った事も。
一杯のごめんなさい。
それを声に出すだけで、精一杯だった。
頭に重みを感じて、顔を見上げる。
髪をぐしゃぐしゃに荒らすように撫でられていた。
「これだけは覚えときナサイ。俺は、お前を護るのがお仕事デス。
シンデレラを護るナイトは、岩泉クンじゃなくて、俺だからな。」
ふざけた言い回しだけど、力強く聞こえて。
信用して良いかもしれないと思った。
黒尾さんと一緒だったからか、帰り道は特に危険な目に遭う事もなく。
無事にマンションまで辿り着けた。