第14章 アイドルの影響力
プシュッ、と缶を開ける音が聞こえて、再び私の手の中に戻される。
口を付けて、喉に中身を流し込んでみても、味なんかしなかった。
それでも、震えは収まり、少しだけ安心した息を吐く。
「…で?お前、狙われる心当たりあんのかよ?」
私の横、数センチの隙間を空けて座った男からの問い掛け。
心当たりなんか無いから、パニックを起こしたのだ。
否定するように首を振る。
「…ありません。」
「いーや、あるだろ?」
声にまで出した否定を、上書きする否定の声は、隣の男からのものじゃない。
聞こえてきた、前方に目を向ける。
黒尾さんが、目の前に立っていた。
「だから、一人歩きはすんなっつったんだ。」
なんか、ちょっと怒っているようだ。
危ない目にあったんだから、怒られるのは仕方ないとしても。
なんで、いるんだ。
「なんだ、テメェのツレかよ。」
「ツレじゃねぇよ。仕事で、ボディーガードやってる。ガード対象だ、この女。」
「そんなの、ついてるって事は、やっぱ狙われてんじゃねぇか。」
私の疑問なんかお構い無しに、2人が会話を始める。
何やら、知り合いだったようで、入り込めなくなってしまった。