第14章 アイドルの影響力
膝が、震える。
立ってすらいられなくなって、その場にしゃがみ込んだ。
「お、おいっ!しっかりしろって!」
声を掛けられても、震えが止まる事はない。
怖くて、何を拒否したいのか分からないのに、ただただ首を振っていた。
目の前で、舌打ちの音がして、またビクつく。
だけど、音の主は私の様子なんか気にせず、抱えられた。
荷物を担ぐように肩に乗せられ、運ばれた先は公園。
「ちょい、待っとけ。」
ベンチの上に下ろされて、その人は何処かに行ってしまった。
一人になると、誰かに見られている気ばかりする。
視線が怖いから、俯いて両手で顔を覆った。
「…おい。」
声が、聞こえる。
それは、さっきの人のもので、敵意はないらしいのを分かっていたから、指の隙間から外を覗く。
見えたのは、缶。
目の前に差し出されているらしい。
「飲んだら、ちょっとは落ち着くべ?」
受け取れと言うように、手に押し付けられたそれを掴む。
指が震えて、開けられなくて、なんだか苛々してきた。
カチャカチャと、プルタブを何度も引っ掻く音だけが響いている。
「…貸せ。」
その言葉と同時に、手の中の缶が奪われた。