第14章 アイドルの影響力
まだ昼だから、黒尾さんは呼ばない。
たまには、1人で行動したいし。
買い物でも行こうか、なんて考えながら街中を歩いていた。
「…危ねぇっ!」
別に、ぼーっとしていた訳じゃない。
だけど、突然聞こえてきた大きな声に驚いて立ち止まってしまった。
その私の真横スレスレを、バイクが通って。
「…ちっ!」
舌打ちの音が、一緒に去っていった。
もしかして、狙われたの、私。
身体中から血の気が引いて動けない。
「大丈夫か?」
「…あ、はい。」
やっと、動けたのは突然の声の主だろう人が近付いて来てからだった。
その人は、バイクが走り去った方向を見ている。
「アレ、確実にお前狙って走ってたんじゃねぇか?歩道、乗り上げる寸前じゃねぇか。」
足元を見ると、私は確かに歩道の上を歩いていた。
狙ってないなら、私に当たらなくても他の歩行者にぶつかりそうなくらいギリギリを走ってきた。
私以外に、危険な目に遭った人は誰一人いないようだ。
予想として、考えていた事が確信に変わる。
完全に、狙われた。
なんで?どうして?
そんな事ばかりが頭に浮かんで、体を護るように抱き締めた。