第14章 アイドルの影響力
それからというもの、仕事の時は勿論の事、トレーニングの時とか、プライベートのお出掛けでも、黒尾さんが付いてくる。
そのお陰なのか、危険な目に合う事はなく日々を過ごしていた。
そんな、平和を崩してくれる突然の連絡。
社長からのお呼び出しで事務所に向かう事になった。
「大熊りこ。事件が起きたぜぃ。」
何故か未だに私をフルネーム呼びをする社長。
言葉の通りなら、もう少し深刻な顔をして貰いたい所である。
「いや、それならもうちょっと、らしい顔して下さいよ。」
「何か事件とか起きると楽しくね?らしい顔、してるべ?」
そうだった。
事件イコール、面白い事が起きる方程式のこの人にとって、これが‘らしい顔’だった。
「…で、事件って何なんですか?」
関係の無い事で言い合っていても仕方ないし、話を戻すように問い掛ける。
「大熊さん、これ、見てくれる?」
社長とは別の机で、パソコンをいじっていた縁下さんに呼ばれて近付いた。
私に向けられたモニター。
そこに映し出されていたのは…。
【大人気の逃げる企画に参加決定したよっ☆】
と、タイトルが付いている日記…ブログ。
その主は、有名アイドルの及川徹。
これが、どうしたのか。
意味が分からなくて、近くの縁下さんの顔を眺めた。