第13章 ボディーガード
1人で歩く、帰り道。
プロ仕様で化粧されていても、オーラも何もない私は注目される事もなく、自宅付近まで辿り着く。
私の住んでいるマンションは、駅から少し遠くて、人気のない道を歩かなきゃならない。
だけど、今まで何かあった事もないし、襲う方だってどうせ犯罪なら綺麗な人を狙うに決まっている。
だから、何も気にしていなかった。
私の、数歩後ろを歩いて着いてきている人がいる事に気付くまでは。
初めは勘違いだと思っていたけど、早歩きしても、逆にゆっくり歩いても。
決められたように、一定の距離を空けて聞こえる足音。
このまま帰って自宅を知られたら嫌だから、勇気を出して振り返った。
「うぉっ!」
私が振り向くのは予想外だったみたいで、後ろにいた背の高い男が目を瞬かせている。
「勘違いだったら、すみません。さっきから、私の後ろをずっと歩いてませんか?」
ビクビクしたら、そこに付け込まれる。
怖いけど、毅然とした態度を取った。
「後ろを歩いてたのは間違いねぇな。…あ、ストーカーじゃねぇよ?」
目の前の男は、癖毛なのかセットなのか分からない髪をガシガシとバツが悪そうに掻いている。
「ストーカーじゃなきゃ、何なんですか?」
「大熊りこさん。アナタのファンです。」
強めの声で、疑いの色を濃くして問い掛けると、今度はとてつもなく胡散臭い笑顔を浮かべた。