第13章 ボディーガード
ニコニコと効果音が付きそうな笑顔のまま、呆気にとられて言葉を失った私の手を握る。
「今日の放送、見ました。トレーニングしていた場所が家に近かったもので、会えるかと思って散策していたんです。」
こっちが何か言う前に喋り続ける男。
お礼を言って返せば良いのか、近いからって会いに来るのはストーカーだと怒ればいいのか。
そんな事すら分からなくて、口を金魚みたいにパクパク動かしていた。
「…ぶっ!くくっ!…なーに、本気にしてんだよ。」
私の様子が面白かったらしい。
吹き出すように笑って、手を離された。
「ま、でも。今回の放送は場所割れそうだし?気ィ付けた方がいいぜ?ま、出来るだけ傍にいてやるけど。」
「…は?」
男の言っている事の意味が分からない。
それを察知したのか、一枚の名刺を差し出された。
【町の便利屋 猫の手貸します‐お助けキャッツ‐ 黒尾鉄朗】
名刺を見ても意味は分からないままである。
便利屋さんを頼んだ覚えもない。
「照島社長からの依頼でな。ボディーガードって事で、これからの仕事にゃ同行させて貰うわ。」
口で説明をしてくれたけど、もっと分からなくなった。
それなら、社長から連絡があったり、紹介されたりするものだと思う。
確認をしようと、社長に電話を掛けた。